本稿の内容は、2019年9月6日現在です。
2018年9月6日3時7分、胆振地方中東部を震源とし、マグニチュード6.7、最大震度7の平成30年北海道胆振東部地震が発生した。震源に近い厚真町・むかわ町・安平町では甚大な被害が発生し、札幌市の一部でも大きな被害が出た。また厚真町の苫東厚真火力発電所が損傷で停止した影響で道内全域が停電、ほぼ復旧するまで2日を要する事態も起きた。
本稿では安平町の瑞穂ダムと周辺の瑞穂安平停車場線に絞って、被災状況やこれまでの経緯を記述したい。
写真A・瑞穂ダム周辺。赤・紫・黄色は旧道道。赤色はダム建設前からのルートで今なお通行可能。紫色はダム建設時、一時的に切り替えられたルートで水没していない部分。黄色は水没した旧起点付近。マーカーをクリックすると、該当地点の情報を表示します。 初期画面を表示
調査の結果、次の被害が確認された。
「堤頂下流部の法肩」とは、瑞穂ダムと大きく表示されている斜面を指す。
倒木や土砂崩れの影響により、瑞穂安平停車場線と接続する安平町道瑞穂林道2号線、周辺の林道は通行止めが続いている。
被災の詳細は画像の説明文に記した。
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写真B・2015年9月17日撮影。地震発生前の瑞穂貯水池上流側。瑞穂大橋周辺に水はなく、ダム建設前の道路が露出している。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、40%に縮小。元画像の縮尺は2万分1。
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写真C・2018年9月11日撮影。地震で周辺の斜面は崩れ、瑞穂大橋・水明橋・鳥取橋周辺に大量の流木が滞留した。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、20%に縮小。元画像の縮尺は1万分1。
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写真D・町道瑞穂林道2号線の瑞穂大橋。橋本体は致命的損傷を免れたものの、下流側の防護柵が一部損傷した。周囲の山崩れにより大量の流木でダム湖がせき止められ、橋の前後を通る町道・林道が寸断されている。2018年9月11日撮影。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし。縮尺は1万分1。
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写真E・水明橋。谷が流木で埋まり、橋を支える部分がずれる現象も生じた。右上は、町道瑞穂林道2号線の決壊箇所である。水明橋から約100m上流が、道道と町道の境界。2018年9月11日撮影。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は1万分1。
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写真F・鳥取橋。橋梁を支える移動制限装置が損傷、防護柵が変形した。ここも谷が流木で埋められ、道道は土砂崩れに遭っている。ダム湖へ分かれる道を分岐してすぐの地点に、道道の瑞穂ゲートがある。2018年9月11日撮影。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は1万分1。
瑞穂ダム周辺は災害復旧の対象に含まれている。
おおよそ次の手順で工事は進められる。国土交通省・災害復旧事業の主な流れを参照した。
2018年度は主に応急工事や調査・設計が行われ、2019年度から災害復旧工事が本格化した。9月上旬からは、多くの大型車が瑞穂安平停車場線や一般国道234号を行き交うとのことである。
落札日 | 納入期限 | 落札額 | 工事名称 |
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2018/10/02 | 2018/12/20 | 425万円 | 瑞穂安平(停)線災害復旧工事地質調査その1 |
2018/10/02 | 2018/12/20 | 238万円 | 瑞穂安平(停)線災害復旧工事地質調査その2 |
2018/10/02 | 2018/12/20 | 241万円 | 瑞穂安平(停)線災害復旧工事地質調査その3 |
2018/10/02 | 2018/12/20 | 244万円 | 瑞穂安平(停)線災害復旧工事地質調査その4 |
2018/10/16 | 2018/12/20 | 775万円 | 瑞穂安平停車場線外災害復旧工事(水明橋外)橋梁補修設計 |
2019/01/17 | 2019/03/20 | 940万円 | 早来瑞穂地区A災害関連緊急治山測量設計委託業務 |
2019/01/17 | 2019/03/20 | 9,900万円 | 早来瑞穂地区A災害関連緊急治山工事 |
落札日 | 契約日 | 落札額 | 工事名称 | 工期開始 | 工期終了 | 主な工事内容 |
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2018/12/13 | 2018/12/13 | 6,842万円 | 早来地区瑞穂ダム復旧対策検討等業務 注1▼ | 2018/09/18 | 2019/03/22 | 被災した瑞穂ダムの復旧対策検討を早急に行う必要があるため、随意契約とした。堤体及び貯水池法面の調査、堤体の設計、地滑り対策工の設計、堤体材料の土質試験及び室内試験、ダム検討委員会資料の作成。 |
2018/12/13 | 2018/12/14 | 1,030万円 | 早来地区瑞穂ダム応急工事 | 2018/09/18 | 2019/03/15 | 緊急に応急工事を講じなければ、堤体の亀裂が降雨及び融雪水により洗掘され更なる被害を受けるため、随意契約とした。応急対策箇所である、亀裂の深度及び延長を確認する堤体の一部開削工事。早期に堤体復旧を行うため、盛立材料を確認する原石山試掘工事など。 |
当初4,012万2,000円だった税込み契約額は次の理由により、2019年3月8日に7,389万3,600円へ増額となった。
公示日 | 落札日 | 落札額 | 工事名称 | 工期開始 | 工期終了 | 主な工事内容 |
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2019/01/17 | 2019/02/21 | 1億7,000万円 | 早来地区瑞穂ダム堤体災害復旧工事 | 2019/03/15 | 2020/02/28 | 流出土砂排除、掘削土 7,000m³、堤体復旧、地覆・高欄、階段復旧、産業廃棄物処理 |
2019/04/09 | 2019/05/28 | 1億8,600万円 | 30年災586号瑞穂安平(停)線外災害復旧工事 | 2019/06/05 | 2020/03/23 | 崩土除去 21,000m³、水明橋・鳥取橋補修(伸縮装置・支承・防護柵)、ほか安平町内道道1路線 |
2019/05/28 | 2019/06/27 | 2億円 | 早来瑞穂地区Aその2(第1工区)災害関連緊急治山工事 | 2019/07/-- | 2020/03/23 | 床固め、コンクリートブロック 520m³、谷止め、コンクリートブロック 375m³、土留め鋼製 83m、法切り 4,632m³ |
2019/05/28 | 2019/06/27 | 3億300万円 | 早来瑞穂地区Aその2(第2工区)災害関連緊急治山工事 | 2019/07/-- | 2020/03/23 | 谷止め、コンクリートブロック 333m³、谷止め、コンクリートブロック 513m³、土留め鋼製 170m |
2019/06/06 | 2019/07/25 | 1億7,600万円 | 早来地区瑞穂ダム右岸貯水池復旧工事 | 2019/08/01 | 2020/03/23 | 土砂流出等排除 10,500m³、土砂流出抑制 L=40m |
2019/06/13 | 2019/08/22 | 3億8,039万円 | 早来地区瑞穂ダム貯水池復旧工事 | 2019/09/02 | 2020/03/23 | 土砂流出等排除 49,500m³、土砂流出抑制 L=127m |
2019/06/13 | 2019/08/22 | 3億7,299万円 | 早来地区瑞穂ダム水明橋工区復旧工事 | 2019/09/02 | 2020/03/23 | 土砂流出等排除 45,000m³、土砂流出抑制 L=31m |
2019/06/13 | 2019/08/22 | 2億2,357万円 | 早来地区瑞穂ダム鳥取橋工区復旧工事 | 2019/09/02 | 2020/03/23 | 土砂流出等排除 31,500m³、土砂流出抑制 L=79m |
胆振東部地震から1年後を上空から見た映像。45秒過ぎから映る瑞穂大橋周辺は、これから復旧工事が進むであろう。
なお瑞穂大橋を含む町道瑞穂林道2号線の工事は、着手されていないようである。瑞穂大橋は2018年度に定期点検実施の予定だった。安平町が開設したデジタルアーカイブ|平成30年北海道胆振東部地震のページでは、瑞穂大橋上にて土砂を除去している様子が確認できる(写真)。
リンク先のツイートに2019年4月の瑞穂大橋が撮影されている。
また瑞穂ダムは、貯水池の水を抜いた状態にある。
今日は安平町の瑞穂ダムを観に行って来た!
— よしひろ (@ponpoko_on) 2019年9月14日
行ってビックリ!!
今年春にあった水が全て抜かれてた!災害復旧工事で水を抜いたらしい。お魚さん居なくなっちゃった…(。-_-。)
写真は今年の春と今日 pic.twitter.com/anMzXp5dp8