室蘭市内の中央町と東町を結ぶ中央東線は、朝日新聞社募集の「北海道の自然100選」で1位に選ばれた地球岬の近くを通り、観光道路とも呼ばれます。舟見町と新富町の間に、250m ほど(道路現況調書では 500m)の未供用区間が残ります。もっとも地球岬側から通った場合、市道経由で中央町へ抜けられるため、あまり意識しないでしょう。ほかに山手ルートと呼ばれる新ルートが存在し、しかも一部開通している事実はあまり知られていません。
図1・JR室蘭駅周辺の地図。B地点-D地点が道道中央東線の新ルート。青い線は当初計画ルートで、紫色の線は山手ルート見直し案。G地点-H地点は未供用区間である。マーカーをクリックすると、該当地点の情報を表示します。 初期画面へ
室蘭港線交点(図1のA地点)から西進する中央東線に対し、新ルートは南進します(写真1)。B地点までは室蘭市道中央町3丁目3条通線で、科学館通の別名があります。2005年10月7日に開通しました(注1▼)。科学館通開通までの経緯は後述します。
写真1で前方に見える案内標識を拡大しました(写真2)。直進方向の道道番号に注目してください。
「919」ではなく「757」と表示されています。
道道757号は、中央東線の前身である室蘭環状線(初代)の番号です。黄金鷲別線を延長する形で、1972年2月4日に認定されました。一部が主要地方道へ昇格した際、室蘭環状線(2代)と中央東線に分割されました。珍標識の一つといえましょう。
両方向に幅 3.5m の歩道を設置しました。車道はロードヒーティングが施されており、夜間は除雪しません。
写真3の歩道橋の向こうに見える建物は、食料品店・北海道銀行支店・パチンコ店・レストランの複合施設です。撮影当時、室蘭市には長崎屋が2店舗ありました。右手に見える室蘭中央店は1981年4月開店、室蘭駅周辺の最大商業施設で、店舗自体は黒字経営でしたが、老朽化に伴い2012年1月限りの閉店を決めました。しかし存続を求める署名や室蘭市の要望もあり、閉店時期は同年5月末に延長、さらに同年8月末へ再延長されました。買い手がつかなければ解体も視野に入れていた閉店後の店舗は、食品スーパー大手のアークス(本社・札幌市)の子会社・ラルズが2013年12月に取得し、建物を補修した上で、2014年7月25日に「スーパーアークス室蘭中央店」として開店しました。
山手ルートはT字路のB地点から通行止めで、地球岬へは市道を右折します。撮影当時は柵の前に花壇がつくられ、標識の向こうは駐車場となっていました。その奥は森が広がっています。工事は中断されたままです。写真5のテラコッタに記してある「室蘭土木現業所」の文字が、道道である事実を物語っていました。
もともとは、図1▲のG地点とH地点を結ぶ「追直(おいなおし)ルート」を建設する予定でした。写真7の左に広がるモトマリ墓地の南を通ることから、沿線住民の合意が得られず断念します。認定時のルートは全通することなく終わりました。
代わりに計画されたのが山手ルートで、1994年度に具体化し、1995年度より事業化されました。建設目的を、室蘭市は以下のように説明しています。
事業化当初の山手ルートは、図1のB地点からF地点付近を結ぶ延長 1,620m とし、C地点までは1995年度着工、約7億円の事業費を投じて1996年12月12日より供用を開始しました。その先は、3本のトンネル建設を予定していました(延長は順に 478m・200m・125m)。現道の屈曲解消と、最急勾配の 10% 以上から 6% への緩和が見込まれました。1997年度より最初のトンネル坑口までを工事し、翌1998年度から掘削を始め、総事業費約40億円で2005年度の全面完成を目指していました。ルートに重なる家屋が12戸あるとされ、一部は移転を終えています。
しかしトンネル着工予定が1999年度に延び、その後も実施されず、宙に浮いた形となりました。工事が事実上凍結されているのは、次の理由のためといわれています。
現在は既存の市道を大部分で利用するルートを要望し、2019年時点で 570m が事業化されています。
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 室蘭市中央町3丁目50番1地先(道道室蘭港線交点)から
室蘭市舟見町2丁目96番9地先まで前1 14.48m から 18.16m まで 1,226.25m 道道室蘭港線重複 L = 32.00m 室蘭市山手町1丁目95番4地先から
室蘭市母恋南町1丁目74番1地先まで前2 8.00m から 32.00m まで 1,144.40m 室蘭市中央町3丁目50番1地先(道道室蘭港線交点)から
室蘭市舟見町2丁目96番9地先まで後1 14.48m から 18.16m まで 1,226.25m 道道室蘭港線重複 L = 32.00m 室蘭市山手町1丁目95番4地先から
室蘭市母恋南町1丁目74番1地先まで後2 8.00m から 32.00m まで 1,144.40m 室蘭市山手町3丁目8番19地先から
室蘭市山手町2丁目11番2地先まで後3 15.50m から 23.00m まで 285.00m
区間 供用開始の期日 室蘭市山手町3丁目8番19地先から 室蘭市山手町3丁目8番1地先まで 平成19年3月31日
区間 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 室蘭市山手町2丁目11番18地先から
室蘭市山手町2丁目10番3地先まで6.99m から 7.60m まで 270.00m
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 室蘭市山手町2丁目10番3地先から
室蘭市山手町2丁目10番3地先まで前 7.50m から 7.50m まで 12.25m 同上 後 14.75m から 88.75m まで 300.04m
科学館通と中央東線山手ルートの既開通区間は、室蘭市レインボープロジェクトの一環として整備されました。
レインボープロジェクトとは、室蘭市中央町周辺の土地区画整理事業です。1994年度から2008年度の期間で実施されました。代表的な事業は次の通りです。
科学館通は、室蘭港線(旧国道)と市立室蘭総合病院を短絡する道路です。ルート上にはガソリンスタンドなど、移転対象の建物が16件ありました。中でも最大の物件が、NTT東日本室蘭支店西営業所でした。図2▼の、現在使われない電報電話局の記号がある場所です。NTTのビルは、室蘭市南西部を網羅する 13,000 回線の交換機を収容しており、この移設に時間が必要でした。以下、関連する経過を表にします。
| 年月日等 | できごと |
|---|---|
| 2000年度 | 移転費用の調査。NTTと協議を行う。移転開始から終了まで、3年程度を要する見込み。 |
| 2000年10月 | 科学館通のうち、病院前交差点からNTTビル前までの工事に着手。 |
| 2001年11月 | 千歳歩道橋の階段・スロープの移設工事に着手。 |
| 2002年4月24日 | 中央町3丁目の隣接地に新ビルを着工。 |
| 2003年 | 2月、新ビル完成(鉄筋コンクリート3階建て。延べ面積1,340平方メートル。建設費は約5億円)。9月~11月、電話回線・交換機の移設を行う。 |
| 2004年2月23日 | 回線使用区域でBフレッツの提供を開始。 |
| 2004年8月下旬 | 同年6月下旬から始めた旧ビル解体工事が終了。 |
| 2005年 | 3月までに室蘭港線交点付近を更地化。4月以降、科学館通の工事に着手。10月7日供用開始。 |
チャラツナイ橋から母恋中央通交点の間は、1986年度から1992年度にかけて整備されました。該当の告示が下表です。
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 室蘭市中央町3丁目50番1地先(道道室蘭港線交点)から
室蘭市幸町10番9地先まで前 14.80m から 18.16m まで 330.15m 道道室蘭港線重複 L = 26.00m 同上 後 14.80m から 25.00m まで 304.65m 道道室蘭港線重複 L = 32.00m 室蘭市母恋南町1丁目74番1地先から
室蘭市母恋南町4丁目46番131地先まで前 8.00m から 51.20m まで 1,599.91m 同上 後 8.50m から 51.20m まで 1,593.40m 室蘭市みゆき町1丁目238番8地先から
室蘭市みゆき町2丁目247番1地先まで前 9.50m から 23.00m まで 366.00m 同上 後 11.00m から 27.00m まで 365.00m 室蘭市みゆき町2丁目247番1地先から
室蘭市東町1丁目19番地先(一般国道37号交点)まで前 11.00m から 38.00m まで 2,095.30m 一般国道36号重複 L = 43.00m
一般国道37号重複 L = 21.30m同上 後 15.00m から 32.30m まで 2,095.30m 一般国道36号重複 L = 43.00m
一般国道37号重複 L = 21.30m
本項に直接関係するのは2番目の区域ですが、ここではひととおり説明します。
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写真A・1985年5月27日撮影。右手に地球岬、岩壁の上を観光道路が走る。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、約88%に縮小。元画像の縮尺は2万分1。
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写真B・1995年7月18日撮影。地球岬入口から西への道は、なだらかな線形に変わった。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は2万5千分1。