図1は、廃止された旧JR天北線の天北栄仮乗降場が描かれている唯一の地形図です。
天北栄仮乗降場は、分水嶺のトンネルを抜けて右へカーブした地点にあります。距離は上音威子府駅から 6.2km、小頓別駅から 4.0km です。設置時期は不明で、1965年10月ごろに廃止されました。
「榮」の地名と数軒の家屋、点線の道路が図1から分かります。当時の地図記号で幅 1.0m 未満の小径は、中頓別町小頓別へ通じる唯一の道でした。途中で天北線と、地形図に表記はありませんが線路に沿う栄川から離れ、丘を越えていたようです。右下に見える道路は当時の浜頓別常盤線、現・一般国道275号です。
ここに居住者がいたのだろうか。『北海道地名大辞典』によると1938年に字名が付けられ、林業地域で入植者はみられないとあり、そうであれば、家屋の記号は作業小屋の類となります。『中頓別町史』に何らかの記述があるかもしれません。
図1の13年後の1969年に修正した地形図以降、天北栄仮乗降場はもとより、地名表記や家屋・点線の道路まで、跡形もなく消えてしまいました。字名は残っており、一般国道275号・天北峠の中頓別町側は字栄に含まれています。栄川は、1982年修正の地形図から表記されました。
もし1989年5月1日の天北線廃止まで天北栄仮乗降場が存続していたなら、秘境中の秘境駅として、注目を集めたことでしょう。
続きは「天北栄に居住者は…」に書いています。