恵庭市・漁川(いざりがわ)支流の瀑布群を知るきっかけは、1988年に北海道新聞社から刊行された、堀淳一著『北海道 地図を紀行する(道南・道央編)』です。本が発売されてすぐ入手し、一度いってみたいと興味を惹かれました。
白扇の滝・ラルマナイの滝・三段の滝を訪問したのは、1991年5月3日です。恵庭側から行くと、滝へ通ずる道の入口はゲートで閉まっていました。恵庭岳公園線の新ルートが建設されようとは知る由もなく、林道の改修工事ぐらいに考えていました。連休中とあって工事車両の行き来はなく、静かな道のたたずまいと水量豊かな滝をゆっくり堪能しました。林道の狭さからいって、工事車両が往来する中を歩くのは無理だったでしょう。
新ルート開通のニュースを受け、再訪したのは1998年秋です。恵庭側は通行止めのため、一般国道453号交点から入りました。そして白扇の滝駐車場に着いたとき、あまりの変わりようにあ然としました。短期間で、ここまで劇的に…
1998年に再訪した際は、写真を撮りませんでした。それから11年、今年(2009年)10月に再び恵庭側から訪れ、旧道の痕跡を探しながら歩いてみました。かつての地点は特定が難しく、定点撮影とはいきませんけれども、昔と今の違いを少しは対比できたかなと思っています。
『北海道 地図を紀行する(道南・道央編)』所収の「光と影を編む瀑布たち――恵庭渓谷の滝」で、堀淳一氏は次の言葉を結びに書いています。
どの谷も交通量はごく少なく、のびのびと自然のさわやかさと美しさをたのしむことができたのは、うれしかった。谷に排気ガスが立ちこめ、公園にはゴミの山ができるということに、いつまでもならなければいいが――
堀氏が探訪したのは恵庭岳公園線の新ルートが事業化される以前で、白扇の滝までタクシーを乗り入れたとの記述があります。
新ルートの開通で利便性が高まり、瀑布群の知名度・アクセス度が高まったのは確かです。一方で、ひっそりとした林道と滝の光景は、フィルムと記憶の中でしか再現できなくなりました。