苫小牧環状線は、苫小牧港(西港)の石油配分基地を起点に、苫小牧市を東西に横断する路線です。「環状線」を名乗るものの、一周はできません。
実延長区間は、次の都市計画道路で構成されています。
中でも双葉三条通は地元の知名度が高く、苫小牧環状線の代名詞といっていいでしょう。JR室蘭本線を境に、南の幹線である一般国道36号と並ぶ北の幹線です。2005年度の交通量は北光町4丁目の6車線区間で約30,000台に達し、札幌市以外の道道では最多でした。
苫小牧環状線は苫小牧港線を母体とし、苫小牧市道明野樽前線が昇格した路線です。1980年代半ばにかけ、精力的な整備を行いました。市街地拡張を象徴する道であり、沼ノ端から錦岡までが一体化しました。現・樽前錦岡線交点までは、1985年に現在の姿となっています。
図1・錦岡地区の地図。マーカーをクリックすると、該当地点の情報を表示します。 初期画面へ
苫小牧市長の施政方針を参考に、整備内容を表にまとめました。名称は現在のものにしてあります。
年度 | 整備内容 |
---|---|
1972 | 約 3km を舗装。 |
1973 | 明野・糸井地区舗装。 |
1974 | 明野・糸井地区舗装。勇払地区の市道を昇格し舗装。 |
1975 | 沼ノ端・明野地区の未舗装区間整備。糸井地区の街路照明設置と植樹。 |
1976 | 勇払・沼ノ端地区の舗装。街路照明設置と植樹。 |
1977 | 勇払・糸井地区舗装。 |
1978 | 勇払・糸井地区舗装。 |
1979 | 真砂町で拡幅。糸井地区および、ときわ町-樽前錦岡線交点までの路盤造成と舗装。 |
1980 | ときわ町-樽前錦岡線交点までの路盤造成と舗装。 |
1981 | ときわ町-樽前錦岡線交点までの舗装。 |
1982 | 花園町で4車線を6車線に拡幅。1983年度までの対象は図1▲の赤い線で表示した区間。樽前錦岡線交点-青雲町1丁目の用地取得。 |
1983 | 桜木町・しらかば町で4車線を6車線へ拡幅。樽前錦岡線交点-青雲町1丁目の路盤造成。 |
1984 | 樽前錦岡線交点-青雲町1丁目の改良工事。錦大橋完成。 |
6車線化した区間はあらかじめ幅員を確保し、支障なく拡幅できました。全般に中央分離帯が広く、植樹された区間が多いのも特徴です。
2005年に開通の臨海東通アンダーパスは国道234号の記事をご参照ください。
認定時の終点位置は、図1▲のC地点、明徳町1丁目と青雲町1丁目・2丁目交差点です。
半端な場所に見えるでしょうが、当時は道道交点でした。詳細は前編に書いています。
![]()
写真A・1975年10月1日撮影。当時、のぞみ町・美原町一帯は未整備だった。双葉三条通延伸を想定し、中心線が引かれてある。右上を斜めに通っている道路が、双葉三条通の開通まで代用されていた。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、40%に縮小。元画像の縮尺は8千分1。
樽前錦岡線交点から図1▲のC地点までは、暫定2車線で開通しました。錦多峰川に架かる錦大橋(仮称・錦岡2号橋)は、起点方向車線→終点方向車線の順で架設されています。
かつて錦大橋の南には、1975年度に竣工した幅員 5m の旧橋がありました。1983年12月に起点方向車線の橋が架設された後も、並行して残っていたのを実際に見ています。重量制限があったような気がします。撤去時期は覚えていません。終点方向車線の橋は、1989年10月竣工です。
![]()
写真B・1981年10月27日撮影。双葉三条通の延伸工事に着手し始めた。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、角度を補正。縮尺は2万分1。
![]()
写真C・1985年6月24日撮影。新旧の錦大橋が並行している。苫小牧南高校校舎は増築された。当時は1学年最大10クラスあり、生徒数は1,000人を超えていた。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は2万分1。
![]()
写真D・1991年6月26日撮影。改良工事中の苫小牧環状線。ルート途中に見える円形の道路がバス転回所。使用されたのは、錦岡バス停新設から錦西営業所開設までの10年足らずに過ぎない。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は2万5千分1。
1980年代後半、旧終点より先は4車線ありましたが未舗装で、T地点で終点方向車線へ狭まり2車線になっていました。P地点には、バス転回所があったのです。 付近を航空写真で拡大する▲
苫小牧駒澤大学前や錦大沼公園のアルテン前まで運行する道南バス・鉄北北口線は、かつてS地点の錦岡バス停(現・青雲2丁目バス停)が終点でした。草地に囲まれた転回所で、折り返し便発車をしばし待つバスは、のどかな光景でした。当時の状況に近いのが写真Dです。
バス転回所は、新しい錦大橋が開通してから錦西営業所が開設されるまで、短命に終わりました。6年ほどでしょうか。地元住民の記憶にも、さほど刻まれていないかもしれません。
錦岡川は錦多峰川水系の準用河川で苫小牧市が管理し、2級河川の規定が準用されます。区画整理に合わせ、洪水対策で現在の姿になりました。
中錦岡橋は1993年10月に完成しました。舗装工事などを行い、青雲町・宮前町地区の事業は1995年頃に完了したようです。
その先、苫小牧駒澤大学付近までは錦西ニュータウンとして、1978年度から宅地開発されました。当時の流れである職住分離策に沿った分譲は伸び悩みます。交通の不便な点が大きな要因でした。1988年12月7日改正の苫小牧市営バス時刻表によると、錦西ニュータウンを経由するバスは1日5往復に過ぎません。近年は職住近接策が採られており、沼ノ端地区の人口急増がそれを物語っています。
1990年に市営バスの錦西営業所が開設され、バスの本数は飛躍的に増えました。大学開学もあって、周辺の住宅は以前よりも増えています。将来を見越して苫小牧環状線は4車線で建設されました。区間内唯一の橋梁・緑水橋は1980年完成です。
![]()
写真E・先行着手された区間を除き、苫小牧環状線は道自体がない。1981年10月27日撮影。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、角度を補正。縮尺は2万分1。
![]()
写真F・錦大沼へ通じる覚生川通まで、道路がつながった。1985年6月24日撮影。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は2万分1。
双葉三条通で最後に4車線化された区間は1996年1月に測量が実施され、2000年5月から2001年3月まで路盤工事を行いました。供用開始の際、終点位置が移動しました。図1の初期画面は縮尺が大きいため、単にB地点としてあります。終点を拡大した地図▲で見ると、元の終点位置はD地点にありました。青色で囲んだ区域が、移管された範囲です。この結果、道道と市道は重複しなくなりました。
なお終点より先、白老町を経由して登別市に至る「道道苫小牧登別線」構想があります。国道を補完し、防災上の役割を担う路線と位置づけ、苫小牧市と白老町が北海道へ要望しています。整備に多額の費用を要することやルート選定・財政上の問題があり、実現は不透明です。
「苫小牧登別線」とは別に、苫小牧市は都市計画道路「美沢錦岡通」の一部を苫小牧環状線に編入するよう北海道へ要望しています。「美沢錦岡通」は沼ノ端で一般国道36号より分岐し、住宅地の北端を通って錦岡地区に至る約 21.5km の路線です。途中、道央自動車道の仮称・苫小牧中央インターチェンジ付近を経由します。既存の道路を拡幅整備するほか、新規に建設する区間も存在します。苫小牧市が 3.6km を2車線で新規建設・供用したほかは未着手です。1958年3月26日の都市計画決定から半世紀を経ています。
こちらも多額の事業費がかかるため、見通しは立っておりません。
![]()
写真F・2008年7月11日撮影。計画上は覚生川通に立体交差を設け、一般国道36号まで結ぶことになっている。覚生川通も2車線のままだ。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、50%に縮小。元画像の縮尺は2万分1。
道路現況調書のデータを見ると、終点を現在地へ変更した1990年以降、未供用延長が 609m 存在します。結論から述べると、一般国道36号交点までの区間です。
2000年11月13日の白老町議会・決算審査特別委員会の席上、当時の土木課長は次の答弁をしています。
…双葉三条線ありますけども、駒沢大学の前の通り、今整備進めておりますが、あれも高架で36号線につなぐ予定になってます。……それが、北海道側としてはまず優先。その整備完成までに5~6年は掛かるだろうと道では言っております。…
現在の終点で交差する道路は、覚生川通という苫小牧市の都市計画道路です。国道交点から苫小牧アルテン入口まで、約 2,520m の延長があります。幅員の規格は 30m です。
北海道が作成した2018年3月31日現在の都市計画道路現況調書による、覚生川通の延長内訳を表にします。延長の単位はメートル。
道路種別 計画 概成済 改良済 舗装済 一般道道 620 310 0 0 市町村道 1,900 0 1,810 1,810
道路種別 立体交差 箇所 幅員 延長 完成 箇所 延長 一般道道 1 25 40 0 0
道道の現終点と国道交点の間が、道道として計画されていることは明らかです。立体交差の延長が短いのは、アプローチ部分を含んでいないからです。
さらに苫小牧市の都市計画図を見ると、JR線の北側で覚生川通の幅員が広がっています。取り付け道路を想定しているのでしょう。
以上の考察から、苫小牧環状線の終点予定地は国道交点といえます。ただし2018年度末現在、未供用延長の区域は告示されていません。立体交差の計画が進んでいないためです。
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 苫小牧市字錦岡354番23地先から
苫小牧市字錦岡354番24地先まで前 16.00m から 21.20m まで 21.00m 苫小牧市字錦岡354番23地先から
苫小牧市字錦岡536番37地先まで後 15.00m から 64.28m まで 3,297.00m
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 苫小牧市字錦岡521番231地先から
苫小牧市字錦岡536番37地先まで前1 15.00m から 36.00m まで 420.00m 同上 前2 36.00m から 45.60m まで 398.80m 同上 後2 36.00m から 45.60m まで 398.80m
2018年2月中旬・doradounaiさん撮影。桜木町3丁目から終点までと、覚生川通を国道交点まで。