岩見沢市と苫小牧市を栗山町・安平町経由で結ぶ一般国道234号の終点はこれまで、2度変更されました。まず、国道指定までの経緯を表1にまとめましょう。
年月日 | できごと |
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1920(大正9)年4月1日 | 旧道路法施行。国道28号に認定。 |
1952(昭和27)年12月4日 | 1級国道の指定から漏れる。 |
1952年12月5日 | 旧道路法廃止。現行の道路法施行。 |
1953(昭和28)年3月23日 | 道道1号岩見沢苫小牧線に認定。 |
1953年5月18日 | 2級国道岩見沢苫小牧線(234号)に指定。 |
1954(昭和29)年3月30日 | 道道岩見沢苫小牧線を廃止。 |
1965(昭和40)年4月1日 | 一般国道234号となる。 |
道道認定から2級国道指定までの動きは、1953年3月23日北海道告示に詳しく書いています。
さて、岩見沢苫小牧線は、全区間が開発道路(注1▼)に指定されており、指定区間の終点は「苫小牧市字美々152番」でした。違和感があるでしょう。なぜ字沼ノ端ではないのか。なお苫小牧市に「字美々」があったいきさつは、美々と美沢▼をご参照ください。
結論を述べると、一般国道243号の終点は当初、字美沢にありました。つまり、千歳鵡川線の安平町早来までは旧国道でした。1960年代はじめまで、早来と沼ノ端を直結する交通は室蘭本線しかなかったのです。
図1・新千歳空港から苫小牧市沼ノ端にかけての地図。赤色の線は一般国道234号の旧ルートを、紫色の線は同36号の旧ルートを表す。マーカーをクリックすると、該当地点の情報を表示します。 旧終点を拡大 現終点を拡大 沼ノ端駅付近を拡大 初期画面を表示
2級国道指定から間もない、1955年12月15日に開かれた参議院建設委員会の場で「北海道苫小牧市、早来村間道路新設に関する請願」が審議されます。
常任委員会専門員
二百十八号(引用者注。請願の番号)は、北海道の苫小牧線中の早来村と苫小牧市の沼の端間が非常に迂回することになるので、これを室蘭本線沿いの下安平、遠浅、柏原、植苗を通って行くようにしてもらいたいという請願でございます。
建設省道路局長
この道路は全然新設になりますので、よく調査いたしまして実施する計画でございます。
建設委員会委員長
これはまだ調査の関係で、保留にいたします。
採択が見送られた後の経過は不明です。少なくとも、調査は実施したでしょう。
工事は1961年より始まりました。早来から遠浅までは1962年度に測量、1963年12月に完成します。遠浅と沼ノ端の間は、1963年度に測量が行われました。沼ノ端へ至るルートが国道に編入されのは1966年6月です。未舗装で開通し、数年のうちに舗装されました。旧ルートは1967年3月に国道指定を解除され、重複していた千歳鵡川線へ移管されました(注2▼)。
区間 変更前後別 敷地の幅員 延長 勇払郡早来町栄町21番から 苫小牧市字美沢153番まで 前A 8.00m ~ 27.27m 9.009km 同上 後A 8.00m ~ 27.27m 9.009km 勇払郡早来町栄町21番から 苫小牧市字沼の端226番まで 後B 7.90m ~ 81.00m 16.963km
備考 上記A及びBは、関係図面に表示する敷地の区分をいう。
区間 供用開始の期日 勇払郡早来町栄町21番から 苫小牧市字沼の端22番42まで 昭和41年6月23日
当該地区は岩見沢、苫小牧市を結ぶ一般国道234号線の主要経過地にあるが、近年の急速なる高速車輌の増大に伴い在来構造の道路では近代道路に要求されている交通の安全とスピードアップを安全に実施することは不可能なので、この障害を防除するため工事を行なう。
区間 変更前後別 敷地の幅員 延長 勇払郡早来町栄町21番から 苫小牧市字美沢153番まで 前A 8.00m ~ 27.27m 9.009km 勇払郡早来町栄町21番から 苫小牧市字沼の端226番まで 前B 7.90m ~ 81.00m 16.963km 同上 後B 7.90m ~ 81.00m 16.963km
備考 上記A及びBは、関係図面に表示する敷地の区分をいう。
区間 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 千歳市字美沢140番1地先(一般国道36号交点)から
勇払郡早来町北町53番1地先(一般国道234号交点)まで6.00m から 58.00m まで 8,319.00m 一般国道36号重複 L = 15.00m
一般国道234号重複 L = 15.50m
「美々」の地名は、千歳市・苫小牧市の双方にありました。
1902(明治35)年4月1日、苫小牧・勇払・植苗・樽前・錦多峰(にしたっぷ)・覚生(おぼっぷ)・小糸魚(こいとい)の7村が合併し、苫小牧村が成立しました(注3▼)。この際、旧村は大字となります。1944(昭和19)年1月1日に大字を廃止し、14の字と16の町へ改める字名改正が実施され、大字植苗村字美々が字美沢となりました。
胆振支庁(現・胆振総合振興局)からは、隣接する町村の字名と類似するものを避けるよう指導されていました。したがって、千歳町(当時)にもある「美々」は使えません(注4▼)。代わって採用されたのは「美沢」でした。丘陵地から沢にかけての雑木が、四季を通じて美しいことに由来します。
※本項の作成にあたり、『北海道地名大辞典』(角川書店刊)のほか、2000年当時の植苗小中学校教諭・石動祐介氏の『植苗の語源は「ウエンナイ」では美沢は何!?』(ウェブで公開されていたが、現在はリンク切れ)を参照いたしました。
早来-沼ノ端間の新ルートが開通した当初、図1▲のD地点から現在の苫小牧環状線(旧一般国道235号)・上厚真苫小牧線交点までが未開通でした。D地点から右に折れ、一般国道235号交点を経て沼ノ端駅通を右折、駅前で左折し約 370m 並行したのち踏切を渡っていました。
1967年の地形図(図5)でも分かるように、沼ノ端市街と一般国道36号を結ぶ新ルートの工事が進んでいました。図1▲のD地点と現道道2本と交差する地点までが先行開通し、1969年12月に現ルートへの切り替えが完了しました。
旧国道の一部は2000年9月より、苫小牧環状線へ編入されます。総事業費38億円を投じた臨海東通アンダーパスを含む、上厚真苫小牧線交点から拓勇二条通までの約1.2kmは新設区間で、2005年4月1日より全面供用を開始しました。
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写真A・1966年9月2日撮影。一般国道234号現ルートは新規工事中で、新勇振橋の架設が進む。旧ルートや一般国道36号の周辺は原野や湿地で、建造物がほとんどない未開の土地であった。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は2万分1。
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写真B・2018年8月6日撮影。屈曲していた勇払川は改修され旧勇払川となり、横断する拓勇三条通・拓勇二条通も整備された。住宅が増え、企業や商業施設が進出し、半世紀で景観は一変した。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、35%に縮小。元画像の縮尺は1万分1。
区間 変更前後別 敷地の幅員 延長 苫小牧市字沼の端22番の42から 同市字沼の端226番まで 前A 7.27m ~ 27.00m 3.149km 同上 後A 7.27m ~ 27.00m 3.149km 苫小牧市字沼の端22番の42から 同市字沼の端229番まで 後B 8.50m ~ 40.00m 3.006km
備考 上記A及びBは、関係図面に表示する敷地の区分をいう。
区間 供用開始の期日 苫小牧市字沼の端22番の42から 同市字沼の端53番の1まで 昭和43年8月8日
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写真C・1966年9月2日撮影。道道上厚真苫小牧線が未開削で、一般国道235号(当時)との交差点はT字路になっている。234号は沼ノ端市街で直角に曲がる交差点が5か所存在した。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は2万分1。
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写真D・1970年5月16日撮影。現ルートが開通して間もない頃。沼ノ端跨線橋の南側は十字路になっており、旧ルート-沼ノ端市街は通り抜け可能であった。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング・角度を補正し、80.5%に縮小。元画像の縮尺は2万分1。
区間 変更前後別 敷地の幅員 延長 苫小牧市字沼の端22番の42から 同市字沼の端226番まで 前A 7.27m ~ 27.00m 3.149km 苫小牧市字沼の端22番の42から 同市字沼の端229番まで 前B 8.50m ~ 40.00m 3.006km 同上 後B 8.50m ~ 40.00m 3.006km
備考 上記A及びBは、関係図面に表示する敷地の区分をいう。
区間 供用開始の期日 苫小牧市字沼の端53番の1から 同市字沼の端229番まで 昭和44年12月9日
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写真E・1985年9月11日撮影。この頃まで、沼ノ端跨線橋南側の十字路は利用できたようである。現在は分断されて通り抜けできない。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング・角度を補正し、76.4%に縮小。元画像の縮尺は2万分1。
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写真F・2018年8月20日撮影。沼ノ端駅北口の発展は著しい。元々の市街地も東西へ宅地が広がった。小集落だった時代とは隔世の感である。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミングし、35%に縮小。元画像の縮尺は1万分1。
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 苫小牧市字沼の端519番48地先から
苫小牧市字明野9番58地先まで前1 22.00m から 36.00m まで 4,812.15m 一般国道234号重複 L = 2,351.30m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m同上 後1 22.00m から 36.00m まで 4,812.15m 一般国道234号重複 L = 2,351.30m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m苫小牧市字沼の端519番48地先から
苫小牧市字沼の端618番1地先まで後2 22.00m から 45.00m まで 1,306.00m 道道上厚真苫小牧線重複 L = 943.00m
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで前1 22.00m から 36.00m まで 5,343.15m 一般国道234号重複 L = 2,351.30m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市字沼ノ端618番1地先まで前2 22.00m から 45.00m まで 1,781.62m 道道上厚真苫小牧線重複 L = 943.00m 苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで後1a 22.00m から 58.00m まで 5,339.15m 一般国道234号重複 L = 2,347.30m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市字沼の端618番1地先まで後2a 22.00m から 67.00m まで 1,781.62m 一般国道234号重複 L = 68.00m
道道上厚真苫小牧線重複 L = 883.82m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで後1b 22.00m から 58.00m まで 5,345.15m 一般国道234号重複 L = 2,344.80m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市字沼の端618番1地先まで後2b 22.00m から 67.00m まで 1,777.62m 一般国道234号重複 L = 55.50m
道道上厚真苫小牧線重複 L = 883.82m
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで前1a 22.00m から 58.00m まで 5,339.15m 一般国道234号重複 L = 2,347.30m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市字沼ノ端618番1地先まで前2a 22.00m から 67.00m まで 1,781.62m 一般国道234号重複 L = 68.00m
道道上厚真苫小牧線重複 L = 883.82m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで前1b 22.00m から 58.00m まで 5,345.15m 一般国道234号重複 L = 2,344.80m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市字沼の端618番1地先まで前2b 22.00m から 67.00m まで 1,777.62m 一般国道234号重複 L = 55.50m
道道上厚真苫小牧線重複 L = 883.82m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで後1 22.00m から 58.00m まで 5,339.15m 一般国道234号重複 L = 2,338.80m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで後2 22.00m から 67.00m まで 5,398.22m 一般国道234号重複 L = 59.50m
道道上厚真苫小牧線重複 L = 882.82m
一般国道36号重複 L = 1,966.83m
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写真G・1996年9月12日撮影。開けつつあるとはいえ、拓勇東町と北栄町一帯はまだ緑地が多く、街路も未整備だった。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング・角度を補正し、84.1%に縮小。元画像の縮尺は2万5千分1。
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写真H・2001年6月28日撮影。5年足らずの間に、臨海東通・明野南通・拓勇二条通・拓勇三条通・沼ノ端西三条通といった基幹道路と周辺の街路が整備され始めている。国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より引用。解像度 400dpi の写真をトリミング。縮尺は3万分1。
区間 供用開始の期日 苫小牧市字沼ノ端614番1地先から 苫小牧市字沼ノ端618番1地先まで 平成16年12月27日
区間 供用開始の期日 苫小牧市字沼ノ端614番14地先から 苫小牧市字沼ノ端230番116地先まで 平成17年4月1日
区間 変更前後の別 敷地の幅員 延長 国道等との重複区間 苫小牧市字沼ノ端510番15地先から
苫小牧市新開町1丁目20番1地先まで前1 22.00m から 58.00m まで 5,339.15m 一般国道234号重複 L = 2,338.80m
一般国道36号重複 L = 2,385.85m同上 前2 22.00m から 67.00m まで 5,398.22m 一般国道234号重複 L = 59.50m
道道上厚真苫小牧線重複 L = 882.82m
一般国道36号重複 L = 1,966.83m同上 後2 22.00m から 67.00m まで 5,398.22m 一般国道234号重複 L = 59.50m
道道上厚真苫小牧線重複 L = 882.82m
一般国道36号重複 L = 1,966.83m